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zoom RSS 大人のジジョウ

<<   作成日時 : 2006/05/14 20:41   >>

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第五話 過去E

「でもこんな姿を見せちゃったら心配よね? 直樹って優しいから」
 フッとため息を付きながら瑞花は直也の顔を見上げるその瞳は、さっきまでの涙が残っているのかそれとも新たな涙なのか潤んでいる。
「優しくはないだろ?」
 夜が明け始め、部屋の中にはカーテン越しに周囲が明るくなってきた事がわかるようになり、直樹は照れ隠しにそのカーテンを開けに立ち上がる。
「そんなことないよ、直樹はいつもあたしの事を救ってくれるもん……今回だってそうだよ、あんたはあたしの事を救ってくれている」
 救っている? 俺がか? 俺は何もしていないぞ?
 立ち上がる直樹の袖を引きながら瑞花は無言で離れないでと瞳で語り、直樹はそれに答えるように再びソファーに腰を下ろすが、その頭の中はクエスチョンだらけだった。
「エヘ、鈍感男……」
 そういいながら瑞花は腰を下ろした直樹の胸にコツンとおでこを当てて、小さなため息を付き、間近に迫った直樹の顔を見つめる。
 ち、近いぞ……確かに刻まれた年輪は隠せないがそれはお互い様であろう、ここまで瑞花と接近したのはあの時以来ではないか?
 頬を赤らめる直樹だが、そんな事は気にした様子も見せずに瑞花は再びうつむき、何度目かのため息で幸作の着ているシャツを揺らす。
「――あたし看護師になりたかったの」
 まだ周囲が静かなために聞き取る事のできるようなか細い声で瑞花は話し出す。
「あぁ、小さい頃から聞いていたよ……医者通いが多かったお前の家柄のせいだろ?」
 瑞花の父親は俺が知っている頃から既に身体が弱く、毎日のように医者に通っており、それに付き添う瑞花が看護婦に憧れたというのは子供の夢としてはセオリー通りだと思う。
「ウン、最初の頃は夢だったんだけれど、お父さんが最後に入院した時にお世話してくれた看護婦さんがすごく良い人で、それが直接の理由なの」
 瑞花が中学二年生の時、病弱だった親父さんは亡くなり、葬儀に行った時に見せた瑞花の顔はいまだに忘れる事はない。
「なるほどな、それであの時……」
 あの時見せていた瑞花の顔は、決心したようなそんな顔をして父親の遺影を見つめていた。
「そう、最後にお父さんを看取ったとき、その看護婦さんあたしと一緒に泣いてくれたの、そうして一言『ごめんね』って言ってくれた。それを聞いてあたしもこんな人になりたいって思ったの、人の為に泣いたり笑ったりすることができる人に……」

続く……。

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